ダイエーや西武鉄道はそれに近いケースと言えよう。
少なくとも、上場した以上、企業は社会の公器である。
誰でも自分の子供はかわいい。
ましてや、苦労して一代で築き上げた巨大な企業グループを子供に引き継がせたいと考えるのは、ごく自然であろう。
崇高な企業理念と株主利益追求創業者が真に高い志を持っていれば、子供への承継を、企業の繁栄や存続よりも優先することはないはずである。
このように、崇高な企業理念を欠いたまま、金儲けに徹した会社が、持続的にかつ大きく利益成長する例は古今東西皆無であろう。
コーポレートガバナンスにおいて、内部規律を高める崇高な企業理念は重要である。
米国では、クラスアクション訴訟に代表される司法による監視と取締役の独立性が、コーポレートガバナンスにおいて重要な役割を果たす。
つまり、上場企業の過半数を占める独立取締役がCEOを監視し、取締役の独立性を株主が訴訟を通じて監視する仕組みである。
このように、米国のコーポレートガバナンスは外部の監視を基本とする。
「村社会」とも言われ、訴訟などの法的プラットフォームが大きく異なる日本において、外部の監視に依存したコーポレートガバナンスの在り方は限界があると考える。
組織として、高いプライド、高い倫理観、高い志を共有することが、強い内部規律を生む。
常時、警察や検察が従業員や経営者のそばに付き添って監視していれば、企業不祥事は大幅に減少するのであろう。
事実上不可能である。
そうであれば、崇高な企業理念を経営者や従業員が持つことにより、自己を規律することが、日本の実情に適したコーポレートガバナンスとは言えまいか。
そうであるならば、日本においては、外部の監視よりも、内部の規律を重視すべきと言える。
筆者の結論は、「崇高な企業理念を持つことなしに、長期的に、大きな株主利益を実現することは不可能である」ということである。
言い換えれば、長期的に、大きな株主利益を実現したければ、崇高な企業理念を持ち、同時に企業の社会的責任を果たすことが重要であるということである。
これらを同時に実現するのが経営者の責務である。
「日本は、歴史的にものづくりが重視され、金融やサービス業が軽視される」、あるいは「過度にものづくりが重視される傾向がある」という指摘がなされることがある。
「日本はものづくりに強く、欧米はものづくりに弱い」という意見も聞かれる。
資本市場と企業経営は車の両輪である。
日本の資本市場は欧米と比較すると未成熟であると言われる。
その未成熟さが、本来、日本が得意であったはずのものづくりにまで影響を与えていると思われる。
だからこそ、資本市場の活性化、金融力の強化が必要であると言え日本はものづくりに強いか?「かつて、日本のものづくりは強かったが、現在では自動車、カメラなど一部の精密組立産業を除き、日本のものづくりは競争力が低下した」、が事実ではなかろうか。
特に、半導体、半導体製造装置、コンピュータ、通信機器、液晶、薬品、航空宇宙、インターネットほとんどない。
強いて言えば、原子炉、自動車のハイブリッドシステムくらいであろうか。
米国のハイテク企業が圧倒的に強いのは、当然、理由がある。
米国ハイテク企業の強さは膨大な研究開発費に支えられている。
日本も対GDP比研究開発費は国際比較のうえでも高いが、絶対額は米国が圧倒的に大きい。
米国国立科学財団(NSF)によると、研究開発費の絶対額の半分以下である。
OECD合計が、6632億ドルで、OECD諸国平均は、221億ドルである。
対GDP研究開発比率でみると、日本が3.2%と米国の2.6%を上回る。
米国では、1960年代には、軍事技術や宇宙開発を通じて、技術開発が促進された。
米国の研究開発費の半分以上は国防と宇宙によるものであった。
古くは、アポロ計画を通じて、さまざまな新商品が開発された。
例えば、宇宙飛行士の服を開発するためにゴアテックスが発明され、宇宙17を高熱から守る素材を応用してテフロン加工のフライパンが作られ、偵察写真の精度を上げるために写真フィルムの感度を向上させた。
17年代以降、民間が研究開発の中心となり、現在では研究開発費の、%前後が民間によるものである。
過去の蓄積は今でも大いに生きている。
コンピュータや半導体も、アポロ計画において政府が基礎研究を推進した。
03年に設立され、米国半導体業界の競争力復活の原動力となったといわれる半導体技術開発のための半官半民組織セマテックの成功は、17年代の米国ハイテク企業の成功の原動力となったという評価がある。
NTTドコモのFOMAやKDDIの目の携帯電話サービスで使われている第三世代移動体通信技術CDMAは、17年代に米国の軍事技術を民間に転用した技術である。
アポロ計画から開発されたロケット打ち上げ技術を応用して、衛星放送、カーナビゲーションシステムなどが生まれた。
米国における産業政策の中で最も成功したのは「情報スーパーハイウェイ構想」である。
鮒年に就任した民主党のクリントン大統領は、イノベーション、国際競争力向上のために、政府が介入する方針を明確に示した。
ゴア副大統領が提唱した国家情報インフラ(NII)は、通称、情報スーパーハイウェイ構想として、IT産業育成に貢献した。
同時に、ヒトゲノムの解読プロジェクトは、ITと医療を大きく発展させた。
コンピュータ2000年問題(Y2K)などと重なってITバブルを生んだ。
このように、米国のものづくりの強さは、強力な基礎研究開発力に支えられているのである。
加えて、金融の力も大きい。
以下、その詳細を議論する。
日本のものづくり弱体化の原因は数多くあるが、資本市場が未成熟なことが大きな原因の一つであると思われる。
日本企業の時価総額が小さいのは、利益の額が小さいからである。
それでは、なぜ、日本企業の利益額が小さいのか。
以下の理由が考えられる。
1業種当たりの参入企業が多いため、規模の効果が得にくい。
また、過当競争に陥りがちである。
携帯電話、家電、パソコンなどがその典型である。
1社が過度に多角化しているため、企業全体の売上自体は大きくても、個々の事業が小さい。
経営実績が不十分でも、経営者が理由に交代させられることが多くない。
あるいは、ものづくり弱体化の原因は未成熟な資本市場とも数多い。
経営者の流動性が低いため、優秀な経営者を探すのが困難である。
それではなぜ、こうした現象が日本で起こる一方で、欧米では起こりづらいのか。
日本では資本市場を通じた資源の最適配分が十分になされていないからであると考えられる。
通常、1業種当たりの参入企業が多く、過当競争である場合、事業の投下資本利益率(ROIC)は加重平均資本コスト(WACC)を下回ることになる。
不採算事業を継続するインセンティブはないため、低収益企業はその事業から撤退する。
その結果、適正利潤が得られるところまで参入企業数が減少する。
低収益事業を持てば、株価が下落し、株主の不満は高まる。
株主の支持を得られない経営者を持つ企業は、買収の標的となるか、あるいは取締役会がCEOを解任する一般論であるが、労使協調型で、かつ強いリーダーシップを好まない「日本的経営」は、事業部門の撤退などのリストラを嫌う。
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